小さな勇者達 8

 

 リカにはわかった。フジヤマスターはちゃんとうごいてる。
みんなにばれないようにしてるんだ。
でも、リカじゃ通じない。
フジヤマスターと話ができるのは、きっとしんじろーだけなんだ。

 「しんじろー!」
リカはでっかいこえで叫んだ。
(はい……)
もう半べそな声。
「フジヤマスターから出たいっていうんだ!」
しんじろーがでたがらないから、フジヤマスターも出さないんだ。
きっとそうだ。
(で、でも、そんなこといったらふじやまくんにわるいです)
「わるくない!」
もー! じれったい!
リカがじたばたしてたら、昴がいつのまにかランダムスターからおりてリカのとなりにいた。
リカを見るとうなづいて、
「大丈夫だ新次郎。暗いのが怖い、もう出たいと、言ってごらん」
って言った。
すばるはリカの言いたいことがちゃんとわかってる、さすがすばるだ!

 しんじろーはまだなやんでるみたいだった。
リカとすばるが顔をみあわせて、もっかい声をかけようと思ったら、中からしんじろーの泣き声がきこえてきた。
(もう、あかりきえちゃう、こわいよ、こわいよう……)
ひっく、ひっく、って、ほんとにないてるんだ。
だんだん暗くなってくのに、こわいのがまんしてたんだな。
しんじろーはフジヤマスターが大好きだから、こわいっていわなかったんだ。
(まっくらだようー、すばるたん、こわいよ、おそとにでたいようー)
うわーん! って、こんどこそしんじろーは大泣きした。

 もうだめだ、やっぱりハッチをこわすしかない。
リカもすばるもそう思った、そのときだ。
きゅううーんって、フジヤマスターから音がした。
さしだされたままだった腕がまっすぐになって戻ってく。
モノアイがさっとひかって、リカをみたようにみえた。
しんじろうの泣き声もぴたっとやむ。
「新次郎! 大丈夫か!?」
すばるが心配しておおごえをだした。
(……だいじょぶです、あかりついた!)
すばるははしごをかけあがってハッチのノブを回した。
さっきはびくともしなかったのに、あっさり回ってパカッとあいた。

 「すばるたん!」
とたんにしんじろーが飛び出してきてすばるにだきついた。
「よかった、新次郎……」
すばるも、しんじろーをぎゅーっとしてやってる。
すばるはしんじろーに甘すぎるけど、こんかいはしょーがない。
リカもはしごを上ってみた。
フジヤマスターの中は、リカのシューティングスターと同じように、沢山の計器に光がともって、すごくきれいだった。
正面のモニターもちゃんとうつってる。
シートにしんじろーのもってた懐中電灯が落ちてた。
ひろってみたら、もう完全にきえてる。

 「すばるたん」
しんじろーはすばるにだきついたまま、くすんとはなをすすった。
「あのね、ふじやまくんをおこったらだめですよ」
「フジヤマスターを?」
「しんじろーがわるいんだもん、ふじやまくんは、しんじろーのなのに、しんじろーはぜんぜんあいにこなかったから……」
すばるはこまったかおして笑ったけど、リカにはすばるがためいきついたのが見えた。

 たぶん、フジヤマスターは色々調べられる。
ハッチがあかなくなったのは大問題だし、とつぜん動かなくなったり動いたりしたのも大問題だからだ。
しんじろーも、なんとなくだけどそれがわかるから、しんぱいなんだ。

 

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確かにそれは困る。

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