小さな勇者達 1

 

 リカはしんじろーが大好きだ!
同じぐらい、すばるも大好き!
あとな、ダイアナも、サジータも、あんりもプラムもラチェットも、みーんな大好き!

 でもな、しんじろーはとくべつに大好きなんだ。
だって、いまのしんじろーはリカのおとーとだからな。

 今日はな、しんじろーとリカで、楽屋でらくがきしてあそんでるんだ。
すばるは演技の最終確認だって。
サニーもラチェットも、大人はみんな舞台をみないといけないから、リカがしんじろーがかりだ。
リカは今度のレビューにでないからな。

 しんじろーはこのごろ、いつもでっかいかばんをもってる。
すばるが買ってくれたんだって、しんじろーはみせてくれた。
肩からかけるやつ。
なかに、ラクガキ帳と、クレヨンと絵本が入ってるんだ。けっこう重い。
しんじろーはラクガキ帳の紙をリカに1枚わけてくれた。
「りかたん、なにかいてるんですか?」
しんじろーがリカの絵をのぞいてる。
「ノコ!」
ノコの絵は大得意だ。
「しんじろーは何かいてんだ?」
「しんじろーは、ふじやまくんをかいています」
ふじやまくんってのは、しんじろーのスターのことだ。
しんじろーはスターがだいすきなんだって。
スターはともだちだからな、リカもシューティングスターがだいすき。

 「ふじやまくん、いま、なにしてるかなあー……」
しんじろーはちょっとさみしそうな顔になった。
前に、まちがってスターを動かしちゃったから、今はしんじろーだけで整備室に行くのを禁止されているんだ。
禁止って、やっちゃだめってこと。
スターに会いに行くのがだめなんて、サニーはわかってない。
リカやしんじろーにとって、スターはともだちなのに。
あ、でも、しんじろーだけじゃなくて、リカもいれば会えるぞ!
ひとりが禁止なんだから、ふたりならいいはずだ。
リカちょう頭いいな。
「しんじろー、フジヤマスターに会いたいか?」
「あいたいです……。だって、ときどきふじやまくんがよんでいるんですよ」
「へー、なんてよんでる?」
「いっしょにとびたいって」
リカだって、スターがなにいってるのかわかる。
ずっと会えなかったときは、あいたかったっていわれるぞ。
よばれているような気がすることもある。
スターにいわれるままに動いて、助かったこともある。
でも大人はわかんないんだって。
だめだな、大人は。
リカはわかるぞ。しんじろーが呼ばれているって言うならそうなんだ。
「じゃあ、会いにいこー!」
「えっ?! いいんですか?!」
「もちろんだ! リカはおねーさんだし、いっしょにいけば会える!」
「やったー!」
しんじろーはすっごいおおきなこえで、やったーって言って、そのまま立ち上がって廊下に走っていった。
せっかちだな!

 ふだん、スターは格納庫にしまってある。
みんな寝てるんだ。
今はわるいやつがいないから、あんまり出番もない。
大きな事故とかがあると出かけたりするけど。
スターは、まいにち整備のおっちゃんたちが、きちんと世話してくれるんだ。
リカとしんじろーが行くと、おっちゃんたちがすぐに気付いて手をふってくれた。
「ふじやまくん!」
しんじろーはスターにだきついて動かなくなった。
かんどうの再会ってやつだな。
リカはおねーさんだから、そんなふうにしないぞ。
シューティングスターを見上げて、「よっ」て手をあげた。
実際には動かないけど、シューティングスターもリカに手をあげたんだぞ。心の中でな!
「こらこら、だめだよ」
あ、しんじろー、スターにのぼっちゃってる。
おっちゃんが声をかけるけど、もう上の方までいっちゃって手は届かない。
「うーん、あかない……」
しんじろーは、スターに乗りたいんだな。
「しんじろー! かってにのったらダメだぞ。昴がかなしむ」
とたんにしんじろーはハッとなって、スターからおりようとした。

 「危ない!」
つるつるしたスターのてっぺん。
そこからしんじろーがころんって転がるのが見えた。
整備のおっちゃんがかけよって、リカも走る。
でもまにあわない。
もうダメだって思ったしゅんかん。
シューって、蒸気がふいた。
それで、リカもおっちゃんも前が見えなくなってたちどまったんだけど。

 「おお……」
おっちゃんは目を真ん丸くしてスターを見た。
しんじろーが、フジヤマスターが差し出した手の平の上でひっくりかえってたからだ。
「スターが、勝手に……こんなことが……。大丈夫かい、大河君」
おっちゃんはそーっと近づいて、しんじろーを覗き込む。
しんじろうは目をぱちくりして、びっくりした顔だったけど、でも全然怪我はなかったみたいだ。

 それっきり、フジヤマスターは動かなかった。
「ふじやまくん、なにもいわなくなっちゃった……」
「きっと一人で動いてつかれたんだ。おっちゃんにまかせれば大丈夫。な」
「あ、ああ。大丈夫さ! フジヤマスターはすごく強いんだからな」
「でも……。しんじろーをたすけてくれたのに……」
いまにも泣きそうだ。
リカはしんじろーをよしよしってなでてやって、フジヤマスターを見た。
片手を前にさしだしたかっこうで止まってる。しんじろーをたすけたんだ。
しんじろーはスターの足に抱きつくと、
「ありがとう」
っていって泣いた。おっこちてやっぱりこわかったんだな。
泣いちゃったしんじろーの手をにぎって、リカも、フジヤマスターにありがとうって、伝えた。

 

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