小さな勇者達 2

 

 「へえ、フジヤマスターが……」
さっきのことをすばるに話したら、昴はむずかしい顔になった。
フジヤマスターが勝手に動いてしんじろーを助けた話だ。
すばるはいつも、むずかしい顔をしてるけど、あごんとこに手をあてて、ふむ、って言ったきりだまる。
大人はどうして、かんがえごとをするとき、あのかっこうをするんだろう。
リカもためしにやってみた。
「ふーむ」
別になにも思いうかばない!
大人はむだなことばっかりするな。

 しんじろーは、すばるにだきついてなきそうだ。
フジヤマスターが何も言わなくなっちゃったって、しょげてるんだ。
すばるは、ふむってポーズしていない、もうかたほうの手で、ずっとしんじろーをなでてる。
あいかわらず甘やかしだ。
「大丈夫だよ新次郎。フジヤマスターには立派な整備士たちがついているんだから、すぐにまた話ができるようになるよ」
「しんじろーが、おっこっちゃったから、ふじやまくん、むりしたんです」
「無理をしたんじゃない。したい、と思ったことをしたんだ」
すばるは良い事言うな!
リカもそう思う。フジヤマスターはしたいと思ったことをしたんだ。
すばるはしゃがみこむと、ものすごくやさしい顔とでしんじろーをみつめた。
ついでに声も、すんごくやさしい。
「僕の仕事が終わったら、帰りに一緒に様子を見に行こうか」
「はい」
帰りにはなおってると、リカも思う。
スターをなおすおっちゃんたちはすごいからな。
王先生もついてるし。

 

 帰り、すばるは約束どおり、しんじろーを格納庫につれてった。
リカもついてく。
心配だからな。
格納庫についたら、さっきと様子が全然ちがってた。
フジヤマスターのまわりに、みんながあつまってる。
スターは、昼間しんじろーを助けたポーズのままだった。
「王先生」
すばるはしんじろーの手をにぎったまま、みんなの場所に向かう。
「フジヤマスターはどうですか」
「これはこれは、それを今、みなで協議していたところです」
いつもだったら、スターの近くについたとたん、しんじろーはスターにしがみつくけど、今はすばるのてをぎゅっとにぎったまま動かない。
心配そうな顔。
リカも心配だ。
だって、おひるにここに来ようっていったの、リカだからな。
王先生は、新次郎の前にしゃがんだ。
「新次郎殿、さっき、フジヤマスターと何を話したのか、くわしく教えてくれますかな」
しんじろーは、すばるをみあげて、すばるがうなづいたのを確認してから話しはじめた。

 「ふじやまくんは、しんじろーにのってほしいっていってたんです」
「ほうほう」
「でも、しんじろーはなかにはいるやりかたがわかんないから、うえにのっかったんですけど……」
「すべってしまったのですな」
「つるつるって。そしたら、りかたんと、ふじやまくんが、いっしょに、あぶなーいっていって」
おお、リカがあぶない! って言った時、フジヤマスターも言ってたんだな。
「そしたら、ぶしゅーってなって、ふわふわって」
「スターが助けてくれたのですな」
しんじろーはうなづく。
「なるほど、よくわかりました」
さすがは王先生だ。
あんだけでわかっちゃったんだな。

 「ふじやまくん、もうなおった?」
すばるにしがみついたまま、しんじろーはそう聞いた。
王先生は、しんじろーの頭をなでてやって立ち上がると、昴のほうにはなしはじめた。
「フジヤマスターは今、どんな刺激に対しても一切の反応を示しません」
「一切の反応を示さない、とは?」
「整備の為の電源も入らず、もとの姿勢に戻す事もできないのです」
「それは尋常な状態ではないと思うけれど、違うかい」
「ええ。こんな事体は初めてです。物理的にありえんのですがのう。勝手に動いた事もそうですが、その後まったく反応を示さなくなってしまった事も」
おとながむずかしい話をはじめると、しんじろーはすばるの手を放してスターの所にとことこ歩いて行った。
「なおってないの、ふじやまくん……」
みあげる顔が、すごく心配そうだ。
それをみている大人たちも心配そう。
王先生は、すばるとの話をとちゅうでやめて、しんじろーをだきあげた。
「よいですかな、そっと秘密を教えましょう」

 ひみつのことは、本当にひみつだったみたいで、王先生が何を言ったのか、リカにはわかんなかった。すばるにも、ほかのみんなにも。
ただ、しんじろーは目をキラキラさせて、いっしょうけんめい頷いてた。

 

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王先生は紐育華撃団の裏ボスだと思う。

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