小さな勇者達 3

 

 「新次郎、王先生と何を話したんだい?」
すばるはさっき王先生がしんじろーにはなしたヒミツの内容をきこうとしてた。
すばる悪いやつだな。でもリカもしりたい。
しんじろーはニコニコしてくびをふる。
「ひみつなんですから、おしえられないですよ」
「僕にも秘密なのかい?」
「すばるたんにもひみつです」
しんじろーがすばるのいうこときかないなんて、めったにない。
すばるもリカもおどろいた。
でも、すばるはちっともおこってなかった。
リカはちょっと口がとんがっちゃったのに、すばるはえらいなーと思ったら、
「そうだね。ちゃんと約束を守って、新次郎はいい子だ」
なんてほめてる。
じぶんで聞きだそうとしたくせに、わけわかんねー!

 なんてやってたんだけど、その日はけっきょく、フジヤマスターはうごかなくなったままだった。
みんなでがんばったけどだめだった。
しんじろーがむかしおおけがした時、フジヤマスターは一緒におおけがしたんだけど、王先生や整備士のみんなが、あっというまになおしてくれた。
何本もやりがささって、がけからおっこちたけど、しんじろーがなおるより早く、フジヤマスターはなおったんだ。
でも今日はこわれたわけじゃないのになおんない。

 

 つぎの日、リカはしんじろーがしょげてるかと思ってたんだけど、しんじろーはげんきいっぱいだった。
もっと気にするかとおもってたのに、あんがいへいきなんだな。
きのうと同じで、リカは用事がないから、今日もしんじろーとあそんでやる。
そしたらなんだかおかしいんだ。しんじろー、もじもじしてる。
「トイレかしんじろー」
「ちがいま……じゃない、といれ! おといれですよ!」
ん? なんかへんだったぞ。
「いってきます!」
「おう!」
ま、いっか。
しんじろーはすごいいきおいではしってった。
もれそうなんだな。
ずっともじもじしてたもんな。
リカもなんだかちょっとだけトイレにいきたくなってきた。
ついでだから、リカもいこうっと。

 トイレの前まで来たら、しんじろーがトイレの手前の廊下にかくれるみたいにして、きょろきょろしてたんだ。
なにしてんだ、しんじろーのやつ。
リカもしんじろーにみつからないようにかくれる。
さっきもなんか変だったし、いたずらでもするつもりなのかな。
しばらくあたりを見回してたしんじろーが、たったかたーとはしっていった。
トイレとも、らくがきしてた楽屋ともちがうほう。
リカもこっそりついてく。
しんじろーは迷わないでどんどん進んで、整備室の前でとまった。
リカもあわててとまった。
みつかっちゃったかとおもったけど、しんじろーは気付かなかったみたいで、入り口できょろきょろしてから中に入っちゃったんだ。
ひとりで来ちゃいけないのに、悪い子だぞ。
しんじろーがしかられたらかわいそうだから、リカもいそいで中に入った。
二人できたって事にすればへいきだからな!

 中に入ると、しんじろーは王先生や他のみんなにとりかこまれてた。
あーまにあわなかった。
しんじろー、おこられてるんだな。
「おや、リカどの、どうしましたかな?」
王先生に見つかった。
「あのな、しんじろーはリカと来たんだ! ひとりじゃないぞ! だからおこったらだめだぞ」
「ほっほっほ。そうではないのです。新次郎どの、本当に誰にもないしょにしてくださったのですな」
しんじろーはまじめな顔でうなづいてる。
あれ、じゃあ、王先生のひみつのはなしって、このことだったのか。
「りかたん、すばるたんにはひみつですよ」
「わかった。でも、リカにははなすんだぞ!」
そういうと、しんじろーは困った顔。
王先生をみあげると、王先生がにっこりこっくん、ってしたので、しんじろーもにこにこしてふり返る。
「あのねりかたん、しんじろーがひとりでふじやまくんにのるんです」
フジヤマスターはあいかわらず手を前に出したかっこうのままかたまってる。
その手を、しんじろーはじっとみてた。
「そしたら、うごくかもしれないんだって」
「そっかあ、がんばるんだぞ、しんじろー」
「はい!」

 ひみつの理由もリカにはわかった。
すばるはきっと、しんじろーがひとりでスターにのるっていったら反対するからだ。
大反対する。まちがいない。
もしもなんとかせっとくできたとしても、きっとすごく心配するからな。
ひみつにしといて、あとでスターがいつのまにかなおったことにすればいいんだ。
「では、ハッチを開けます」
ハシゴでスターに登っていた整備士のおにーさんが、スターのハッチをこじあけた。
電源が入んなくても、あそこはちゃんとあくんだぞ。
事故のときとか、あかなくなると大変だからな。
「新次郎どの、われわれも上にいきましょうぞ」
「はい」
しんじろーが、はいって言ったその顔が、おっきいしんじろーのまんまだったので、リカはびっくりした。
やっぱりしんじろーはしんじろーなんだな。

 

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リカは天才だ。

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