小さな勇者達 4

 

 リカや、整備士のみんなが見ている前で、しんじろーはスターにのりこんだ。
ハッチはあけたまんまだ。
しめちゃって、もしかしてあかなくなったらたいへんだから。
王先生はハシゴの上からしんじろーを見てる。
「どうですかな? 新次郎殿」
「あし、とどかなーい」
しんじろーの足じゃ、足でそうさするぶぶんは全然とどかない。
リカのスターはリカサイズだから大丈夫だけどな。
しんじろーは、でっかいときのサイズだから、とどかないんだ。
とどかないと、うごかせないぞ。
リカは心配になって王先生をみたけど、王先生はにこにこしてた。
先生がにこにこになると、めがほそーくなってどこにめがあるのかわかんなくなる。

 「心配ありませんぞ。届かなくとも良いのです」
「いいの?」
いいのか。
王先生はにこにこのまま、こっくん、と、でっかく頷いた。
「フジヤマスターに、新次郎殿の気持ちが通じればそれで良いのです」
「しんじろーのきもち……」
しんじろーは、目を閉じて、スターのいろんな場所にさわってた。
でも動かない。
しばらくそうやってたけど、しんじろーは王先生をふりかえって、すごいことをいった。
「あのね、このふた、しめてもいいですか?」
「ハッチのことですかな?」
「はっちっていうんですか? おやねのぶぶん」
「閉めてもかまわないですけれど、電源が入りませんから、真っ暗になってしまいますぞ」
「まっくらなの?」
とたんに、しんじろーはしょんぼりの顔になる。
「どうして閉めたいのですかな?」
「だって、のるとき、ほんとうはおやねがしまるでしょ。それに、しんじろーがふじやまくんにのるときは、いつもふたりきりだったし」
そういやそうだな。
でも王先生はすごくびっくりしたみたいだった。
「どうして、以前はいつも二人きりだったとわかるのですかの」
「だってまえに、ふじやまくんがいってたもん」
「ふうむ、なるほど」

 王先生は考え込んでる。
リカも、まっくらなのは反対だ。
だってしんじろーはまだちいさいから。
まっくらは大人だってこわいんだぞ。
整備士のお兄さんの一人が、懐中電灯を持ってきてくれた。
こんなのじゃ全然だめだとリカは思うけど……。
「どうしますか、新次郎殿。正直、ハッチを閉じるのは賛成できませんが」
「ちょっとのあいだは?」
「ちょっと、ふむ……。では、一分だけ。もし途中で怖くなったら、中からその懐中電灯でハッチを叩いてくだされ」
「こうですか?」
新次郎は、電気でふたのはじっこを、カンカンって叩いた。
小さい音だったけど、ちゃんと聞こえる。
たぶんしんじろーは、力いっぱい叩くのはいやなんだ。
リカだってやだもん。
「しんじろー、だいじょうぶだ。リカ、すぐそこにいるからな!」
「はい!」
もうぜんぜん怖くなさそうな顔だ。
さっきまではちょっと心配そうな顔だったのに。
さすがはリカのおとうとだな。

 しんじろーより、まわりのみんなの方が心配そうだった。
王先生が、ゆっくりハッチをしめていく。
ぎりぎり下まで閉めて、しんじろーを覗き込んだ。
「大丈夫ですかな? 懐中電灯は?」
「ついてます」
「怖かったら……」
「かんかんします!」
「では、しめますぞ」
ぱったん。

 ハッチが閉まって、しーんとなった。
もし、しんじろーがカンカンして、聞こえなかったら大変だ。
だからみんな、ひとこともしゃべんなかった。
王先生が、一分計るように持ってきた時計の音がするだけ。
スターの中からもなんも聞こえない。
しんぱいだけど、だいじょーぶかーって聞くのもできない。
リカは段々怖くなってきた。
ノコが、小さく、きゅーと鳴いた。
早くハッチがあくといいな。
じゃなければ、フジヤマスターが動くと良いのに。
こんなに長く感じる一分は、リカにとってはじめてだった。

 

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子供の頃は暗いのがむやみに怖かった。

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