小さな勇者達 5

 

 しんじろーがスターに入って一分がたった。
でてくる約束の時間だ。
みんなは顔を見合わせる。
中からなーんにも音が聞こえないからだ。
王先生が、ハシゴを登って、外側からハッチをコンコンってたたいた。
トイレとおなじだ。
はいってますかーってきくやつだ。
「新次郎殿?」
でもなかからは返事がない。

 王先生は、整備士のお兄さんと目を合わせてうなづいいた。
開けるんだな。
なかはまっくらだし、せまいし、小さいしんじろーには長いじかんはむりだから。
フジヤマスターはなおらなかったけど、また今度だ。
ハッチを開けるための取っ手の部分を、王先生がぐるっとまわしてひっぱろうとしたときだ。

 きゅううーーーん って、スターが鳴った。
「おお」
王先生が声を出してハッチから手を放す。
モノアイの部分がささっと動いた。
なおったんだな!
リカも、みんなも、身をのりだしてそのあとどうなるのか見守った。
「……」
「……」
「……」
でも、そのあとは、しーん、だった。
何も動かない。
王先生は、もう一回、ハッチをこんこんした。
「新次郎殿」
今度は中からコンコンがかえってきた。
(はーい)
ふたした中からの声だから、あんまりきこえないけど、ちゃんと返事した。
「ハッチをあけますぞ」
(はーい)
王先生は、もういっかい取っ手をにぎって、ぐるっとまわしてからひっぱった。
あれで、ハッチはばこーんとあくしくみだ。
でも王先生はまだ取っ手をひっぱってる。

 がんばってる先生をみたほかの整備士のお兄さんが、はしごを上っててつだった。
ふたりして体重をかけて、ぐいーっとひっぱるんだけど、びくともしない。
しんじろーが入るときは簡単にあいたのに。
もうひとり、おにいさんが登った。
さんにんだ。
もうこれ以上はのっかれないから、みんな心配そうに下でみてる。
でも、ハッチはあかなかったんだ。

 

 「こまりましたな……」
王先生がへとへとになって降りてきた。
いまは他のおっちゃんが登って、まだハッチをあけようとしてる。
もうリカがシューティングスターに乗って、ハッチをひっぱがしたらいいんじゃないか?
そういおうと思ったんだけど、そのまえに、また中からコンコンが聞こえた。
(まだあかないの?)
「今、開けますからな、懐中電灯は大丈夫ですかな?」
そうだ、懐中電灯って、いつまでもつんだろう。
(だいじょぶですよ。あかるいし、ふじやまくんはこわくないから)
たのもしいな、しんじろーは。
でも大人達はものすごくオロオロしていた。
ハッチがあかないって、大変な事だからだ。
なかのひとが怪我してうごけないときとか、ハッチが外から開けられなかったら大変だ。
っていうか、いまあかなかったらしんじろーがでてこらんないし、いま大変だ。

 どのぐらい、みんながんばったろう。
10分はたったと思う。
でもハッチはあかなかったんだ。
もうフタをやききるしかない、なんて、誰かが言ってたけど、こわしちゃったら、しんじろーは泣くだろうなー。
そのとき、リカのキャメラトロンが鳴った。だれだ?
みるとすばるだった。
やばい。
すばるのこと、わすれてた。
(しんじろーをみていてくれてありがとう、もう帰るんだけど、今どこにいる?)って書いてある。
リカが困った顔をしたせいか、王先生もあちゃーって顔だ。
きっとすばるからだってわかったんだ。
「リカリッタ殿、昴殿をこちらへ呼んでくだされ」
「いいのか?」
「ひみつには潮時と言うものがあるのです」
王先生はすんごいまじめなかおで、めをとじてうなづいた。
このかおはリカわかる。かくごしたってやつだな。

 そんなわけで、リカはすばるに、整備室にいるって伝えた。
いましんじろーがどうしているかは教えなかった。
だって、リカ、すばるにおこられるのやだもんね。

 

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みんな覚悟するよ。

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