ぷちぷちみんと 4

 

 「だいあなたん、これおんなのこのおようふくじゃないんですか?」
「いいえ! かわいらしい人なら誰でも着ていいんですよ!」
ダイアナ自身「かわいい人なら女装してもいい。むしろした方がいい!」と信じているので嘘ではない。
全身全霊で力説し、新次郎を困惑させた。
「そ、そうですか……」
ピンク色のひらひらしたワンピース。
スカートをつまんで、もう一度ダイアナを見上げるが、彼女は力いっぱい頷くばかり。
お店に入るなり、彼女は店内を見渡し、この服を見つけると迷わず持ってきた。

 その迷いのない瞳で決然と頷く。
「さあ、カツラもつけてみましょうね!」
うきうきと取り出したウィッグはまぶしい金髪のロングヘア。
おそらく学芸会などで使われる子供用のものだった。
仕上げに、アクセサリー売り場から持ってきたのはカチューシャだ。
プチミントと同じような赤いカチューシャを、ドキドキしながらつけてやる。
かすかに手が震えた。

 「まあ……」
完成した「作品」にダイアナは頬を染めた。
目の前にいるのは、まさしくプチミントの子供バージョン。
頬に両手をあて、うっとり息を吐く。
「なんてかわいらしいのでしょう……」
新次郎は少し唇をとがらせる。
かわいいね、とよく言われるけれど、本当はかっこいいと言われたい。
しかもこんな風にシミジミと、かわいらしいと言われてしまうとさすがにちょっと不満であった。
けれど、
「きっと昴さんも喜びますよ!」
と言われて新次郎も少し表情が変わった。
「すばるたん、ほんとによろこぶ?」
「ええ! 間違いありませんとも!」
ダイアナには確信があった。
昴はプチミントが大好きだったし、彼女とデートもしていた。
間違いなく喜ぶだろう。
「それに、他の皆さんも喜びます、サプライズです!」
「そっかあ」
えへへ、と新次郎が笑うと、ダイアナがくらりと額を押さえた。
かわいらしすぎる。
けれどすぐにシャキンともちなおし、気合を入れて立ち上がった。
そして、
「すみません、これ、全部ください!」
店員に向けてきっぱり宣言したのだった。

 買ったのは、靴と靴下。それにワンピースとカチューシャ。赤いリボンはチョーカーのかわりだ。
「このまま帰ります!」
と、ダイアナが宣言したので新次郎はびっくりした。
「このままかえるんですか」
「そうですよ。その方が皆さん驚きますから」
「さぷらいず……?」
「そうですそうです。サプライズですとも」
着ていた服は店の人が紙袋に入れてくれた。
最初つれてきた男の子とおもわしき子供に、女の子の服を着せるダイアナに、最初は不思議そうな店員だったが、できあがった「作品」には店員も納得だった。
人形のようにかわいらしい。
むしろ、最初から女の子が男の子の格好をしていたのではと、二人が帰ってから議論になった。
ともあれ無事に買い物は済み、ダイアナは満足の吐息をついた。

 

 女の子の格好をした新次郎と上機嫌で手をつなぐダイアナは、かすかに鼻歌を歌っていた。
花畑を夢心地で歩く少女のように、ときおり、うふふ、などと笑いながら。
最初は女の子の服がちょっと不満だった新次郎も、ダイアナがとても嬉しそうなので楽しくなってきた。
長い髪の毛のかつらと、なれないスカートがひらひら足にまとわりついて少し歩きにくかったけれど、大好きな皆が喜んでくれると思うとそれも嬉しい。

 

 

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サプライズでごまかした。

 

 

 

 

 

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