ぷちぷちみんと 2

 

 「大河さん、ほら、あの鳥さんの羽、風切羽が一枚かけているでしょう」
ダイアナと新次郎は、ドーム状の建物の中にいた。
ドームは巨大な鳥かごになっていて、小鳥や水鳥が放し飼いにされ、人間もその鳥かごに一緒に入れるようになっていた。
ダイアナは昴を説得し新次郎を連れ出したが、いつもの動物園ではなく、鳥ばかりを集めたパークの一角へやってきたのだった。
虎がいないから、もしかしたらがっかりするかしら、と、どきどきしながら連れてきたのだが、新次郎は初めての場所に大喜びだ。
なにより、自分と同じぐらい熱心に生き物を見学するダイアナがいてうれしいらしい。

 「あのとりさん、はねがいちまいなくてだいじょうぶなんですか?」
「ええ、鳥さんは羽が抜け変わるんですよ。少しの間ちょっと飛びにくかったりするけれど、大丈夫」
ダイアナがうふふ、と笑うと、うわさになっている気配に気づいた小鳥が二人の目の前に飛んできた。
楽しげにさえずって新次郎の頭に止まる。
「わひゃっ」
思わず首をすくめ、視線を頭上にやるが、自分の頭の上はさすがに見えない。
「あらあら、うふふ」
ダイアナは笑い、ポケットから自分のキャメラトロンを取り出すと鳥を頭に乗せた子供の写真を撮影した。
「きっと昴さんも喜びますね」
撮影したばかりの写真を新次郎にも見せてくれる。
新次郎と、頭の上の小鳥も一緒にダイアナが撮影してくれた写真を覗き込むと、ダイアナはその様子もまた写真に収めた。

 「みなさん、大河さんと遊んであげてくださいね」
いつのまにかドームの小鳥たちが二人の周囲に集まり、肩や頭に乗って歌っていた。
「だいあなたんは、とりさんたちとおはなしできるんですか?」
カラフルな小鳥たちに囲まれた新次郎はくすぐったそうに笑い、尊敬のまなざしをダイアナに向けた。
「言葉は通じなくても、気持ちは伝わりますよ。大河さんだって、虎さんの気持ちがわかるでしょう?」
「わかる!」
新次郎は深くうなずいて、頭の上に手を伸ばす。
「とりさん、あたまのうえはくすぐったいから、てのうえにのってほしいなあ」
しばし新次郎の頭の上で首をかしげていた青い小鳥が、新次郎の指にピョンと飛び乗った。
そのとたん、しんじろうは大喜びで目を丸くする。
普段だったら飛び跳ねて喜ぶところだろうが、小鳥を驚かせないよう子供なりに気を使ったのだろう。
鳥のとまった指を目の前にもってきて、パアッと顔を輝かせた。
小鳥と目が合い、今度はダイアナを見る。
「つうじた! だいあなたん、つうじましたよ!」
青い鳥はチチ、チチ、とさえずって飛び上がると、再び新次郎の頭に乗ってしまった。
「あれれー」
「うふふ、小鳥さんは、大河さんの頭の上がふわふわで気に入ったみたいですよ」
「そっかあ」
確かに新次郎の頭の上は、小鳥の巣のようにふわふわしていた。

 

 新次郎とダイアナは小鳥のドームに何時間も滞在してしまった。
ダイアナは何枚も写真を撮影し、心底満足げにため息をつく。
「かわいらしい写真がたくさんとれました。ああ、幸せ……」
「ことりさんのおしゃしん?」
「はい。大河さんと、小鳥さんたちの」
小さな子供に笑顔を向け、ダイアナはその子供のくりくりと丸い瞳に魅入られた。

 ふと、思ってしまったのだ。
こんなにかわいらしい子供なのだから、大人になってもかわいらしいプチミントの仮装を今やったら、どれだけかわいらしいかしら、と。

 

 

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本当はメガネも試したいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

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