小さな勇者達 10

 

 次の日、リカはれんしゅーをさぼってしんじろーの所に行ってみた。
ん、さぼったんじゃないな、しんじろーの面倒をみるのもリカの仕事のうちだからな。
しんじろーはサニーのとこでねっころがってた。
ソファによこになって、絵本を見てたけど、リカにきがついたらすっとんできて抱きついた。
「りかたん!」
「おー、しんじろー、なにしてたんだ?」
「あのね、えほん、よんでたんです」
にこーっと笑う。

 おちこんでるかと思ったけど、ぜんぜん大丈夫みたいだったからリカはほっとした。
こどもはたんじゅんだ!
なんて考えてたら、しんじろーはリカのポンチョをつんつんってひっぱって、こそこそっと耳に話しかけてきたんだ。
「あのね、りかたん」
サニーに聞こえないようにしてんだな。
「あのね、きょーもふじやまくんのとこに、つれてってくれませんか?」
「えっ?! 整備室に!?」
「しー、りかたん、しー」
サニーにきこえたかと思ったけど、書類見てあたまかかえたまま動かないし全然こっちみてないから平気だったみたいだ。
でも、今日もあそこにいくのはなあー。

 「だめですか……」
しょぼん、としんじろーはうつむく。

 すばるはしんじろーに甘すぎる。
でも、リカだって、ときどきはあまやかす。
「……ちょっとみるだけだぞ」
しんじろーをなかしたらあとあとまで気になるしな。
そう言ったら、しんじろーはパッと顔をあげて、リカにだきついた。
「りかたんだいすき!」
しってるしってる。
だからおちつけな。

 「サニー。リカ、ちょっとしんじろーとシアターの中を散歩してくる」
返事がなかった。
「サニー!」
「ん? ああ、リカ、いつきてたんだ」
「さっきからずっといるぞ! しんじろーとシアターの中を散歩してくるからな!」
「わかったよ。外に出ちゃだめだからね」
「おう!」
「はーい!」
そんなわけで、リカはしんじろーをつれて整備室に行った。

 フジヤマスターは、昨日と同じ場所に普通に立ってた。
かんたんな検査しかしないって、王先生も言ってたし、きっともう終わったか、これからやるんだろう。
しんじろーはフジヤマスターのそばに、たったかたーと走っていって、ひざの部分にだきついた。
しんじろーはいつもこうやる。
「ふじやまくん、きのうはありがとう」
すばるもそうやってお礼いってたなーそういえば。
「またあそびにくるから、きゅうにうごかなくなったりしないでね」
ほっぺたをぎゅーっと押し付けて、しんじろうはスターにくっついてる。
「うごかないと、しんじろーはしんぱいですよ」

 しんじろーはしばらくフジヤマスターにくっついたままだった。
いつのまにか、王先生がリカの隣に立ってたけど何も言わなかった。
しんじろーはふりむくと、そりゃもうすんごいニコニコ顔だったんだ。
「もういいのかしんじろー」
「はい! またあそぼうって、ふじやまくんも」
「それはそれは。よかったですなあ」
しんじろーは今度は王先生にだきついた。
今日のしんじろーは、リカに抱きついて、スターに抱きついて、王先生に抱きついて、
そういえば、お願いばっかりしてるから、きっと今度も。
「あのねわんせんせー、ふじやまくん、どこもこわれてないから、へんなことしないでね」
やっぱりな!
「ですが、検査だけはしませんと」
「けんさっていたくない?」
「いたくありません」
「すぐおわる?」
「一日はかかるでしょうが……」
「じゃあそれがおわったら、またふじやまくんにのってもいいですか?」
「えっ?! うーむ……」
ほらなほらなー。
でもリカにはわかる。
王先生は、いいっていう。
なんとかことわれないかなーってしばらく考えてから、でもけっきょくは、いいっていうんだ。
だって、しんじろーがだきついて、おねがいしたら、ことわれる奴はシアターにはいないんだから。

 

おわり

TOP 漫画TOP 小さな勇者たち1へ 前へ

実はリカが一番厳しい。同じ子供だからか。

inserted by FC2 system