サジータと新次郎 3

 

 昼寝してる新次郎の隣にまんまと座って、あたしは次なる目標を考えていた。
隣に座ってるのも悪くないけど、やっぱりさあ、ほら、一度は抱っこしてみたいんだよね。
うーん、もちあげたら起きるかな。
まあそんときはそんときか。どれどれ……。
「サジータ」
「!」
びっくりしたじゃないか!
急にサニーが声をかけてきて、あたしは慌てて手を引っ込めた。

 「触ると起きるよ」
「起きないよ。ぐっすり寝てるし」
ホントは起きるかもしれないけどさ。
「ボクに用事があるんじゃないの」
「ないよ」
あっさり返事してやった。
だって、実際サニーサイドに用事なんてないし。
「大河君を触りに来たのかい」
「だって、寝てるときぐらいしか触れないじゃん」
「暇なの?」
「暇を作ってきたんだよ!」
「うー……ん……」
あ、やべ。
段々声が大きくなってたので、新次郎が身動きした。

 「そんなに大河君と仲良くなりたいのかい」
サニーはコソコソと、最初より小さい声になった。
なんだかんだ言って、こいつも新次郎に超甘い。
「ほっとけ」
だって、あたしだけこいつを抱っこしたことないんだよ。
仲良くなる以前の問題だよ。
抱っこできる奴にはわからない。
「じゃあさ、夕方になったら二人でお風呂に入ったら?」
「風呂!?」
今度こそ、あたしはでかい声をだしちまった。
思わずサニーもあたしも息を止める。
でも新次郎はすやすや寝たまま。
なんだい、やっぱりちょっとやそっとじゃ起きないんじゃないか。
「大河君はお風呂も大人しく入ってていい子だよ」
「嫌だよ。いくら子供だって、新次郎は新次郎なんだからさ」
もし万が一、新次郎が元に戻った時覚えていたら最悪だ。
昴は以前、新次郎が大人に戻った時、なんとなく子供になってた事を覚えていたようだと言っていた。
ついでに言うなら、そんな事、昴が絶対許さないと思う。
こっそり一緒に風呂に入って、あとでばれたら殺されちまうよ。

 「わがままだなあ」
「うるさいよ」
あたしは、しっしと手を払ってサニーを黙らせた。
そうしておいて、さっき中断させられた抱っこをしてみようと手を伸ばす。
タオルごと、腕の下に手を入れてもちあげる。
うおお、あったかいね。
というか、あつい。
そして、重い!
重いよこいつ!
「力の抜けてる子供は重いよ〜」
横からサニーが口を出す。
「本当に子供の扱いがへただね」
黙ってろ!

 新次郎は、超重い上に、体が熱く、ついでにぐんにゃりしてた。
色々試行錯誤して、それでもなんとかもちあげて、自分の方に抱き寄せ……。
「ん……」
「!」
あたしが新次郎を目の高さまでもちあげたときだった。
それまで眠ってた新次郎が眉間に皺をよせると、不満そうに目をあけた。
「さじーたたん……」
「お、おはよ……」
「ふえ……」
そのまま新次郎の顔はくしゃくしゃになっていく。
「おーっと、こっちおいで大河君」
あ、サニー! いつのまに!
サニーサイドが素早く新次郎をあたしから奪って抱き上げた。
「ふええ……」
「はいはい。まだ眠いよねえ。うるさくして悪かったよ。誰かさんのせいでさあ」
誰かさんってあたしのことだろ!
でもサニーが背中をぽんぽんと叩くと、ぐずったまま新次郎はあっさりとまた寝ちまった。

 「子供の扱い上手いね……」
「不本意だけど、シアターにいる間は世話係りだし。それよりサジータもそろそろ戻ったら?」
「……」
確かに戻らないとやばい。
あーあ、せっかくいいアイデアだったのに。
起きてる時じゃ傍にもなかなか寄れないからさ。
でも今日はもう仕方がない。
あたしはしぶしぶ部屋を出た。
扉を閉めるとき、サニーサイドが新次郎をソファにそっと寝かせる様子が隙間から見えた。
その光景が、本当に羨ましかったんだ。

 

 

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サニーさんは上達していた。

 

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