ちびじろーと杏里

 

 大河さんは本当に迷惑!
隊長としての自覚がなさすぎるからあんな事になるんだと思うな!
あんな事っていうのは、あやしい薬を飲んで子供になっちゃった事。
サニーサイド様があの薬をすすめたらしいけど、
それにしたって、サニーサイド様は怪しいその薬を一目見て危険と看破なさったのに、
大河さんは全然気が付かないで全部飲んじゃったんだから。

 そのあげく、子供になっちゃって、昴さんのおうちにずっと泊まってる。
まったくもう!
世話が焼けるんだから。
誘拐された時、みんなどんなに心配したか、元に戻ったら絶対に叱ってやるんだから。
私もあの時は、眠れなかったし泣いちゃった…。
あ!違うよ、大河さんがかわいそうとかで泣いたんじゃないよ、す…昴さんが悲しそうでお気の毒だったから!

 この前、昴さんが大河さんのお洋服について悩んでた。
「沢山購入してもすぐに使わなくなってしまうんだな…」
って。悩んでたって言うか、寂しそうだった。
それもこれも大河さんのせいだけど。
昴さんは大河さんが小さいままでも、元の姿に戻っても、結局寂しい思いをするんだから。
このへんもきっちり叱るんだ。

 今日、その大河さんが、リカや昴さんと一緒に苺牛乳を作ってくれた。
私やプラムの分まで。
にこにこしちゃって…。
かわいいなんて思ってないんだからね!
あれは子供みたいだけど、中身は大河さんなんだから!騙されない!

 で…でも、一応お礼は言わないと…。
「新次郎君、作ってくれてありがとう。いただきます」
こんなに小さいのに、さん付けで呼ぶのは悔しいので、小さい間は新次郎君と呼ぶ事にしたんだ。
一口飲んでみたら、意外とおいしかった。
昴さんの教え方が上手なのね。

 「えへへ…、しんじろーよりも、りかたんが、いっぱいつぶしたんですよ、いちご」
「そうね、新次郎君一人じゃ無理だもんね」
つい、大きい時の大河さんに向けるみたいに言っちゃった。
急いで大河さんを見たら、口を尖らせているけど、何にも反論してこなかった。
何よ。しょげちゃって!子供なんだから、言い返してくれば良いのに。
大河さんは小さくてもシャッキリしないんだから!
「ほら!こぼしてるよ!」
白いシャツの胸の所に赤い染みがついちゃってた。
すっごく高いお洋服のはずなのに。
まったくもう!
ハンカチで拭いてあげると、恥ずかしそうに昴さんにしがみ付いちゃった。
「ありがとう、杏里、ほら、新次郎も…」
「ありがとうございます、あんりたん…」
着替え、持ってきてるのかな。
拭いたけど、まだうっすら染みになってる。
世話が焼けるな…。

 

 

 

 あんりたんはおっかないです。
いっつもぷりぷりしています。
しんじろーがそういうと、すばるたんは、
「あんりはしんじろうのことを、とってもしんぱいしてくれているんだよ」
っていいました。
そうなのかなー。
あんなにおっかないのにな。
おようふくがまたあかくなっちゃったから、すばるたんはこまったかおをしてました。
「きょうは、こいいろのふくにすればよかった。ぼくとしたことが…」
といって、かみのけをおでこのとこでもちあげたりしてました。
「きがえをかってくるか…」
「これからおかいものですか?」
おしごとちゅうなのに、いいのかな。
「すばるたん、しんじろーはへいきですけど…」
でも、すばるたんはまゆげがぎゅーっとなったままだった。
たぶん、あかいと、ちみたいで、おちつかない。ってやつだ。
いちごなのにな。

 

 

 

 実は少し前から用意して、シアターに持って来てたんだけど…。
試しに作ってみた男の子用の着物。
うちにあった、男性用の着物の余り布。一人分に足りないし、どうしようかと思っていたら、
大河さんが小さくなっちゃったのでもしかしてって、ためしに作ってみたら、ちょうどいい感じのサイズに仕上がったんだよね。
試しに作ってみただけで、大河さんの為に作ったんじゃないけど。
ほら、もしも汚しちゃったりしたら、シアターには着替えもなくて困るかと思って…。

 あ…大河さんじゃなくて、昴さんが、だよ!

 一応紙袋に入れて用意して、売店の片づけをしていたら、
昴さんが大河さんを抱っこして、おでかけしようとしていたので急いで声をかけた。
「昴さん、どこかへお出かけですか?」
「ああ、ちょっとその辺に新次郎の着替えを買いに…」
やっぱり!大河さんが汚すから!
「あの、もしよかったら、これ…」
紙袋を差し出すと、昴さんは中を覗き込んでびっくりしてた。
抱っこしてた大河さんを下ろして受け取ってくれる。
「これ…杏里が作ってくれたのかい?」
「布が余っていたので…もしよかったらどうぞ」
大河さんも袋の中を覗いてる。
目がキラキラしてて、ついかわいいような気がしちゃう。
ダメダメ!
外側はちいさくてかわいい子供でも、中身は大河さん!
騙されちゃだめなんだから!

 

 

 

 あんりたんが、しんじろーにおきものをつくってくれました。
すごい!
「ありがとうございます!あんりたん!」
しんじろーはちゃんとおれいをいいました。
「しんじろうくんのためにつくったんじゃないんだからね!すばるさんがこまらないようにつくったんだもん!」
あんりたんはまた、いじわるなことをいいます。
でも、しんじろーももうわかりました。
しんじろーがまえに、おとなりのおんなのこにいじめられたとき、おかーたんがいったのをおもいだしたんです。
「すきだからいじめちゃうのよ、なかよくしておあげなさい」って。

 あんりたんは、まっかになってました。
てれてます。
やっぱり、しんじろーがすきなんだとおもいます。

 「ありがとう、あんり」
すばるたんもにこにこしておれいをいってます。
すばるたんがわらってるから、やっぱりあんりたんはほんとうはいじわるじゃないとおもいました。
ほんとうにわるいひとだったら、すばるたんはものすごくおっかないかおになります。
すばるたんは、びっくりするぐらいびじんだから、
おこったときも、びっくりするぐらいおっかないです。
しんじろーはまだ、そんなふうにおこられたことはありませんが、おっかないのできをつけます。

 あんりたんのおきものは、しんじろーにぴったりでした。あおくてかっこいいやつです。
おきものをきているひとは、
に…にー…。うーん…。
「すばるたん、すばるたん」
「どうした?」
「に…にゅー…にうー…」
「ねこのなきまねか?きゅうにどうした…?」
すばるたんはだっこしてくれましたがちがいます。
しんじろーは、
にー…よーく……にうーよーく…って、いいたかったんです。

 にうよーくには、ゆかたやおきもののひとはいません。
あんりたんだけです。
きょうは、あんりたんと、しんじろーのふたり。
おそろいですよ!
すばるたんもきるといいとおもいます。
さんにんで、にうよーくでおきものをきるといいとおもいます。

 

 

伝わらなかったニューヨーク。
杏里は難しいな!
ツンデレは難しいよ!
杏里の誕生日に間に合わず。

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この、ツンとデレのバランスが難しい…。

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