ちびじろーとジェミニ

 

 今日はボク、新次郎にお土産を持ってきたんだ。
昨日すっごくおいしいイチゴミルクを作ってもらっちゃったからさ。
帰るときに渡そうと思って冷蔵庫に入れておいたんだけど、
取りに行っている間に肝心の新次郎を見失っちゃった。

 新次郎を探すのはそんなに難しくないよ。
昴さんのいるところか、サニーさんのいるところに、大抵一緒にいるからね。
今日はもう練習も終わったし、多分、ううん絶対に昴さんといると思う。
で、昴さんはどこにいるかっていうと…。
…うっ…わかんないや…。

 もしかしてもう帰っちゃったのかな。
あーん!ボクのバカ!
声をかけてから取りに来れば良かったよ。

 ボクっていっつもドジなんだ…。
前に新次郎を預かった時だって、
新次郎はボクの家で寝てたのに、どっかで迷子になっちゃったのかと思って、
あっちこっち探し回った挙句に昴さんにまで心配かけて…。
あの時、新次郎が寝たままだったから良かったけど、起きちゃってたら本当に大変だった。
はあ…。

 あ、いけないいけない。落ち込んでる場合じゃないんだった。
二人が帰っちゃう前に探さなきゃ。
…もう帰っちゃったかもしれないけど…。

 

 

 「すばるたん、きょーのおゆうはんはなんですか?」
「うーん…なにがたべたい?」
すばるたんと、てをつないでおうちにかえるとき、
いっつもおゆうはんのそうだんをします。
きまらないときは、おるたーたんに、すばるたんが、
「てきとーにたのむ」
っていうんです。

 「しんじろーは…」
うめぼしがたべたいけど…。
すばるたんはうめぼしがきらいです。
すっぱくておいしいのになあ。
「にほんしょくがたべたい?」
「はい」
うめぼしじゃなくても、にほんのごはんがたべたい。
にゅーよーくは、ぱんばっかりです。
あさも、おひるも、おゆうはんも。
しんじろーのおうちは、
あさも、おひるも、おゆうはんも、ごはんだったのに。
だからときどき、おなかがぺこぺこなのに、おなかがぱんぱんになったみたいになって、
ぱんがたべられなくなっちゃいます。
ふしぎです。

 「じゃあ、とうふはどうだい?」
おとうふ!?
「たべたい!」
おとうふもだいすき!
「ふふ、よかった。じゃあゆうはんはとうふだな」
おとうふもあったのか。
にゅーよーくのにほんのごはんは、うめぼししかないんだとおもってた。

 すばるたんもうれしそう。
すっごくにこにこしてる。
おとうふはきらいじゃないのかな。
「おーい!しんじろー!すばるさーーーん!」
あれ?
じぇみにたんのこえ。

 

 はぁ…はぁ…。
あ!いたいたー!
やっぱり帰るとこだった。
間にあってよかった!
「新次郎!昴さーん!」
大きい声で叫んだら、二人が一斉にこっちを向いた。
あはは、親子みたいー。
なんていってる場合じゃないや。

 「どうしたジェミニ、息を切らせて…」
「だいじょうぶですか?じぇみにたん」
「はぁはぁ…だ…だいじょう…ぶ…」
日ごろから鍛えているから、これぐらい全然平気…だもんね。
ちょっと…苦しいけど…。

 「あのね、新次郎、昨日はありがとう、これ、お礼にと思って…」
ようやく普通に呼吸が出来るようになって、ボク、持ってきた箱を新次郎にやっと渡せたんだ。
「わあ…これ、しんじろうにくれるんですか?」
「もちろん!いっぱい食べてね」
「たべものですか?」
あ、言うの忘れてた。
「苺だよー!」

 「苺…」
昴さん、なんか苦笑してる。
あ…あれ…?変だったかな。
苺の贈り物って…。
「わー!またいちごだ!」
あ!そうか。
苺がいっぱいあったから、シアターでイチゴミルクを作ってくれたんだもんね。
また増やしちゃって…意味ないよね…。
…ボクって…。

 

 じぇみにたんが、またいちごをくれました。
さじーたたんがくれたときと、おんなじぐらいにいっぱいです。
なんだかじぇみにたんは、しょんぼりしていますが…。
「ご…ごめんなさい、ぼく、きがまわらなくって…」
きがまわらないってなんだろう。
「じぇみにたん、いちご、ありがとうございました。またいちごみるくをつくりますね」
「う…うわ〜ん!しんじろうありがとう!」
わーーー!
じぇみにたんくるしい!
ぎゅーってしすぎです。

 「じぇみに、しんじろうがちっそくしてしまうよ」
すばるたんがあわててとめてくれた。
ふーよかった…。

 

 

 

 「そうだ、よかったらジェミニも一緒に家で夕飯を食べないかい?」
昴さんが思いもかけないことを言ったので、ボクびっくりして固まっちゃった。
「今夜は豆腐の予定なんだ。ジェミニは日本食に興味があるんだろう?」
え?え?本当にいいのかな!
「は…はい!興味あります!」
「じゃあ、みんなでおとうふですね」
新次郎がボクの手を握ってくれる…。
昴さんも新次郎も、本当にやさしい。
もう大好き!

 「ごはんのときに、いちごみるくをつくります!」
「豆腐にイチゴミルクか…」
昴さんは困ったように笑ったけど、それでもすっごく幸せそう。
「せめてデザートにしようよ。ね、新次郎」
「はい。でざーとでいいです」
う〜ん…本当に親子みたいだな。
こんな二人と今日は一緒にお夕飯だなんて…。
ボクってすっごくラッキーだ!

 

 

 イチゴに戻って終わろうと思った黒河です。

 

TOP 漫画TOP

イチゴミルクか…

 

inserted by FC2 system