ちびじろーとラチェット

 

 ら…らちっと…らちぇ…っ…。
うーん…。
ながいかみのおねえさんです。
かみのけがすっごくきんきらです。
おなまえがとってもむずかしいんですよ。

 らちっとたん。
ほんとうは、ちょっとちがいます。
むずかしくって、しんじろーはおなまえがじょうずにいえません。
きょーはすばるたんのれんしゅうが、ちょっとしかないから、
れんしゅうしているところをみていてもいいっていわれました。
だから、きゃくせきにすわって、みんなのれんしゅうを、らちっとたんとけんがくです。

 らちっとたんは、みんなのおねえさんみたいです。
「りか、そこすてっぷがちがう」
きびしいです。

 すてっぷっていうのは、あしのうごきかただそうです。
すばるたんがおしえてくれました。
あしを、ぱたぱたって、きまったとおりにするんだって。
いっかいだけしんじろーもやってみましたが、
みぎあしとひだりあしがこんがらがって、ころんじゃいました。
どっちがみぎあしで、どっちがひだりあしなのか、
わかんなくなっちゃうんです。

 「そーかー?じゃ、もっかいやるな!」
りかたんはすっごくはやくあしをうごかします。
しんじろーには、いっかいめも、にかいめも、おんなじにみえましたが、
らちっとたんはにっこりしました。
「こんどはじょうずよ、りか」
うーん…どこがちがうんだろう…。

 しんじろーはらちっとたんと、あんまりおはなしをしたことがありません。
だから、ちょっとだけおっかない。
おとなりにすわっていると、どうしていいかわかんなくなっちゃいます。
はやくすばるたんのれんしゅうおわんないかな。

 さっきからずっとりかたんの、すてっぷのれんしゅうばっかりだし…。
ふあ〜…つまんない…。

 

 

 大河君は私の隣でじっとしてる。
本当に大人しい子供なの。
自分からはめったに話しかけてこないけれど、
どうも緊張しているみたいね。
でも、その方がありがたいわ。
子供はあんまり好きじゃない。
役に立たないし、シアターの中ではやっかいの種にしかならないから。

 それに、私自身は子供の大河君にはあまり干渉しないようにしているの。
だって、記憶が残るかもしれないのでしょう?
性格や行動パターンに変化が現れたら困った事になるわ。
大人の大河君にはあのままの彼でいて欲しいから。
この子にはかわいそうだけど、ちょっとだけ冷たくしちゃってるかも。

 大河君の様子を見ないようにしながら、演技の指導を続ける。
「リカ、また違っているわ」
「おー…もう一回だ!」
さっきのパートをやりなおすリカを見ていたら、急に右腕が重くなった。
「きゃっ?!」
驚いて見下ろしたら、た…大河君が…。
「ちょ…?!大河君…!?」
寝てる…。

 ど…どうしよう!?
起こしても良いのかしら。
でも寝る子は育つっていうし…。
いえいえ、大河君の成長の度合いはもう分かっているから、起こしてもきっと変化はないはず。
ためしにほっぺを突っついてみた。
「んんん…」
起きない…。
子供にお昼寝って重要だったかしら。
ああもう。
もしも無理に起こして体調が悪くなったりしたら私の責任よね。
「らちっとたん〜…くすぐったい…」
あ…私の事かしら…。
そういえば、名前を呼ばれたのは始めてかもしれない。

 大河君はむずかってさっき私が突っついたほっぺをいじってる。
もう一回突っついたらまた名前を呼ばれた。
「らちっとたん…」
「うふふ…発音がなってないわよ…」
昴が夢中になる理由が全然わからなかったけど、
たしかにちょっと…ちょっとだけ、かわいいかもしれない。

 髪の毛に触ったら、すっごくふわふわだった。
子供の髪ってこんなに細くて柔らかいんだ…。
それになんだかとっても暖かい。
体温も高いみたいね。
リカを見ると、さっきよりもずっと上達してた。
ソロのパートの最初の部分からやりなおしてる。
眠っている大河君を見ていたら、こっちまで睡魔が襲ってきた。
ちょっとだけ、目を瞑ってもいいかしら。
ほんの数分目を瞑るだけ。
それだけできちんと目が覚めるから…。

 

 

 「…しんじろう、…しんじろう…」
んん…だれかよんでる…。
「しんじろう」
おかーたんかな…。
「おきて、おわったよ」
「おかーたん…」
「ふふ…ほら、おいで」
おかーたん、だっこしてくれた。あったかい…。

 「らちぇっと、きみもしごとがのこっているんじゃないか?」
らちっとたん…?。
あ、だっこしてくれたの、すばるたんだ。
「すばるたん」
「めがさめたかい?」
すばるたんにだっこされると、すっごくきれいなおかおがすぐちかくにあるから、
しんじろーはいつもてれちゃいます。
「らちぇっとがいねむりなんてめずらしいな…」
「つかれちゃったんでしょうか」
しんじろーはひまだったからねむくなっちゃったんだけど、
らちっとたんはいそがしそうだったのに。

 「ほら、らちぇっと!」
すばるたんはらちっとたんのかたをゆさゆさしてる。
でも、おこしちゃっていいのかなあ、
すっごくきもちよさそうにねてるのに。
「すばるたんー」
「なんだ?」
「らちっとたんは、きっとへとへとなんですよ。ねむっててもいいんじゃないかなあ」
しんじろーがそういったら、すばるたんはこまったようなかおをしてた。
「でもこのままではかぜをひいてしまう」
そっかー、ちょっとさむいかもしれないですよね。
「じゃあ、しんじろーのたおるをとってきます!」
しんじろーはおひるねするとき、おっきいタオルをつかいます。
ふかふかであったかいんですよ。
いっつも、おるたーたんが、あさ、おでかけのときによういしてくれるんです。

 しんじろーはすばるたんからおりて、たおるをとりにいきました。
「あ、こら、しんじろう!」
すばるたんがおっかけてきた。
すぐもどってくるのに、すばるたんはしんぱいしょーだから、
いっつもそばにくっついています。

 

 

 なんだか気持ちの良い夢を見ていた…。
ふわふわで、あたたかいウサギをだっこして寝てる夢。
夢なのに寝ているなんて変わってる…。
でも、とっても気持ち良い。
ウサギはいつのまにかいなくなっていたけれど、
かわりに大きくてやわらかな物にくるまれて、私はますますいい気持ちになってきた。
今日はもういい…。
このままでいられるなら何もいらないわ。
私を包む柔らかい物を抱きしめて、本当に最高の気分になってくる。

 

 

 「らちっとたんきもちよさそうですね」
しんじろーのたおるは、おるたーたんがまいにちふかふかにしてくれるから、
とってもすてきなねごこちです。
「ああたしかに…でもなあ…」
すばるたんはまたこまったおかお。
「あとでうらまれるかもしれないぞ」
うらまれるのか…なんでだろう。
たおるがだめなのかな。

 「まあいい、たまにはらちぇっともひるねぐらいしたっていいだろう」
すばるたんは、ふーってためいきをついて、しんじろーをだっこしてくれました。
「きみがねていると、いっしょにいるにんげんは、ついねむくなってしまうんだよ」
そうなのかな。
でも、ねるのはだいじです。
おおきくなるには、いっぱいねないといけないんですから。
さにーたんは、きっといっぱいねたのでしょう。
おしごとちゅうも、そふぁーでねてたりしますし、まだまだおっきくなるかもしれません。
しんじろーもいつもさにーたんといっしょに、もういっこのそふぁーでねています。
らちっとたんにかした、たおるにくるまってねます。
はやくでっかくなって、すばるたんをまもれるおとこになりたいです。

 

 

サニー成長中説。
新次郎の説だと、昴さんは寝不足な人みたいです。

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