※ミクシにUPした「ちびじろ日記」を加筆して、
後半に昴さんの部分を付け足した物です。
ひらがなばっかりで激しく見難い上、日本語がちびじろ使用の大変な物になっております。…お許し下さい。

 

ちびじろーの苺ミルク

 

きょーは、すばるたんのおしごとが、おやすみのひです。
だから、すばるたんと、いっしょにおりょーりをしました。

さじーたたんにもらったいちごで、いちごみるくをつくりました。

しんじろーは、いちごをふぉーくでつぶすかかりをやりました。
いっぱいあったので、ふぉーくのさきっぽがちょっとへんなかたちになりました。

すばるたんが、へんになったさきっぽを。ゆびでぐいっとやったら、すぐになおりました。

すばるたんはちからがいっぱいあるなと、しんじろーはおもいました。

おさとうをいっぱいいれたかったけど、すばるたんが、
「たくさんいれると、いちごのあじがわからなくなるぞ」
といったので、すこしにしました。
だからすっぱかったです。
もっとあまくても、いちごのあじだったとおもったけど。
すばるたんがにこにこしていたのでないしょです。

おりょーりがおわったあと、しんじろーのふくにいちごのあかいのがちょっとついていて、
すばるたんはすぐにおきがえをもってきてくれました。
ちょっとだからだいじょうぶなのに、
すばるたんは、
「あかいとけがみたいでおちつかないから」
といっていました。
すばるたんはとてもしんぱいしょーです。

あしたは、はやおきして、すばるたんにないしょでもういっかいいちごみるくをしてみようとおもいます。
あまいのと、あまくないのとふたつつくります。
あまいのはしんじろーが。あまくないのはすばるたんがのむといいとおもいます。

 

 

 

 早朝、隣で眠る新次郎がモゾモゾと動くので僕は目を覚ました。
どうやらこっそりベッドから降りようとしているらしい。
声をかけようか迷ったが、チラチラと僕の様子を伺って、気付かれたくない風だったので寝たふりをした。
彼の前で寝たふりするのはお手の物だ。
大人の彼にもバレなかったのだから、子供の彼ならなおさらだ。
薄目を開けて見守ると、前日に自分でベッドサイドに用意した服に着替えようと悪戦苦闘している。
かわいらしくて、つい笑い声が出そうになる。
ああ、ボタンを掛け違えている。
そのままかと思ったが、一通り着替え終えてから新次郎は自分でそれに気がついた。
小さく「あっ」と声を漏らすと、今度はきちんと着なおした。

 小さい新次郎と、大きい新次郎と、僕はあまり差を感じない。
いつもいつも、同じ人物なのだと思い知らされながら日々を過ごしている。
こんな時は特に。
どんな事にも一生懸命で、細かい事にも気がつく。
そのくせおおらかで、他人に対しては本当に親切だ。

 着替えを終えた新次郎がもう一度こちらを振り返ったので、僕は慌てて目を閉じた。
気付かれなかっただろうか。
近くに寄って、僕の顔をじっと見つめている。

 しばらくそうしていたが、やがて軽い足音が遠ざかり、彼が部屋を出て行く音がした。
さて、どうしよう。
何をしようとしているのか非常に気になる。
目を離して危ない事をされては心配だ。

 僕はそっと起き上がった。洗面所からわずかに水音が聞こえる。
顔を洗っているのだろう。
こんな日常的な決まりごとを、彼はいつも言われなくとも自分でやった。
僕の仕事関係の子持ちの友人などは、いつも子供が言う事を聞かないとか、
歯を磨かずに寝るとか、そんな愚痴ばかりいっている。
だから、子供とは総じてそんな物だと思っていた。
そして実際に街でみかける子供達は、たしかに手間がかかる様子だった。
絶対に関わりたくないと思ったものだ。

 だが新次郎は違った。
いつでも素直だったし、きちんと自分の事を自分でやった。
わがままを言った事も何度かあったが、それは大体において彼のせいではない。
出張に行くからどこかに泊まって来て欲しいと言った時、
彼は大泣きして僕にしがみ付いた。
あの時は本当にかわいそうな事をした。
彼にも、彼を泊めてくれたジェミニにも。
すべて勝手に仕事を入れたサニーサイドのせいだ。

 寝室のドアを薄く開け、そっと外の様子を伺うと、新次郎がキッチンへ歩いていくのが見えた。
キッチンには危険な物が多い。
一人で何かしようとしているのにかわいそうだが、やはり近くで見守った方が良さそうだ。
そう思ったとき、冷蔵庫を開ける音がした。
それに、あの音は野菜室の扉の音だ。

 野菜室には今、大したものは入っていない。
僕はすぐに気がついた。
「ふふ…いちごか…」
思わず声が出る。
昨日彼といっしょにイチゴミルクを作ったのだ。
サジータが大量にイチゴをくれたから。
そのまま食べていたらいつまでたってもなくならなそうだったので、
大量においしく消費できる方法を取ったわけだ。

 昨日の再現をするつもりなら、あまり危険はないだろう。
いちごを洗って、ヘタを取り、潰してミルクとまぜればいい。
彼一人でも出来るかもしれない。
実際に昨日も彼が一人でほとんどを作ったのだ。
僕は作り方を教えただけのような物。

 ここからでは音だけしかわからなかったが、やはり昨日と同じイチゴミルクを作ろうとしているらしい。
完成したら、きっと彼は僕を迎えに来てくれるだろう。
このままここで様子を伺う事にしよう。ドアの付近にいれば、不穏な音がしたらすぐに駆けつけられる。
たとえば、コンロをいじる音などがしたら即刻止めに行かねばなるまい。

 だが、そんな心配は杞憂だった。
目覚ましが鳴って、普段起床する時間が来て、僕は何気ないふりをして新次郎の元へ向かった。
「あ、すばるたん!おはようございます!」
「おはよう、新次郎、何をしているのかな?」
しゃがんで覗き込むと、彼は照れくさそうに笑った。
その笑顔が元の彼の物とまったく同じだったので、思わず頬が緩む。

 「しんじろーはおりょーりをしていました!」
嬉しそうに宣言し、机の上の二つのコップを示す。
「いちごみるく!ひとりでできましたよ!」
テーブルの上は潰れたイチゴの汁やはねたミルクで少々汚れていたが、
こんな小さい子供が一人でやったにしては綺麗なままだった。
「そうか…すごいな新次郎は」
頭を撫でてやると、手を伸ばして抱きついてくる。
甘い匂い。
これだけは元の大河とは違っている。
大人になった彼は、清々しい早朝の木々のような香りがした。

 「でもまだできあがりじゃないんですよ」
腕の中で彼は僕を見上げてそういった。
もう一度机の上の彼の作品を見たが、ちゃんと完成しているように見える。
「まだ砂糖を入れていないのかな?」
「ちがいますよ!」
新次郎は腕から抜け出ると、戸棚の上に向かって手を伸ばす。
「すばるたん、あれとってー…」

 戸棚の上にあるもので、彼がそこにあると知っている物は一つしかない。
「はちみつかい?」
「はい!はちみつをいれるとおいしいんですよ」
僕は内心とても驚いていたが、表情に出さないようにそれを取り彼に渡した。

 「えへへ、ちょっとまっていてくださいね」
蓋をあけようと必死になっている新次郎に、僕は聞いた。
「はちみつを入れるって誰に聞いたんだい?」
「…しんじろーはまえからしっていたんですよ!ぎゅーにゅーにははちみつです」
彼が、本当にそれを以前から知っていたのかどうかはわからなかった。
ただ、大きな彼が最初それを知らなかったのは確かだ。

僕が教えたのだから…。

「開けてあげるから、貸してごらん」
新次郎の手が赤くなってきたので僕はそれを奪って開けてやった。
「うわ〜すばるたんはやっぱりちからもちですね〜」
しみじみと言われると少々恥ずかしい。

 「このまま入れると蜂蜜が溶けないから、少量の暖めたミルクと混ぜないといけないな」
コンロに小さい鍋を置き、ミルクを入れて弱火にかける。
「あとは僕がやってあげるから、手を洗っておいで」
すぐ横で興味深そうに覗き込んでいる新次郎に笑いかける。
元気良く返事をし、去って行く彼を不思議な気分で見送る。

 なぜ蜂蜜の事を知っていたのだろう…。
肉体は同じだから、記憶の一部が前後しているのだろうか。
僕にばかり懐くのは、同じ日本人だからだと思っていたが、
もしかして恋人同士だった頃の親密な日々が、なにか関係しているのかもしれない。

 蜂蜜を溶かしたミルクを彼が作ったイチゴミルクに混ぜる。
新次郎は手を洗って駆け戻って来ると、机の上の二つのコップに首をかしげた。
「う〜ん…どっちだかわすれちゃった…」
「何が?」
「いっこはうんとあまいんです。しんじろーように…」

 そうか、昨日は砂糖を控えて作ったから、今日は甘いものが欲しかったんだな。
早朝から糖分をとりすぎると血糖値が上がってしまうけれど…。
僕は手元のミルクを一口飲んだ。
甘い。
ものすごく、甘い。
僕が眉をしかめたのを彼は見逃さなかった。
「あまかったですか…?」
笑って頭を撫でてやり、僕はそれを新次郎に手渡した。
「うん。ものすごく甘いな。…今日だけだぞ」

 僕は新次郎に対して、そのイチゴミルクよりも甘いのだ…。

 

 

甘い自覚はあるようですよ。
はちみつを入れるようにアドバイスしてくれたのは、
ミクシでメッセージをくれたUさんです(笑)

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リカかダイアナさん編で行こうと思います。

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